2011年3月12日土曜日

体験談9:日本で全摘、再建を選択しない理由

発症年齢: 47歳 (2003年)

どのような経緯で乳がんを見つけたのか?
入浴後、身体を拭いている時に左胸乳首下のしこりに気がつきました。その瞬間「乳がん?」とゾッとしましたが、その反面「まさか、私が?」とも思いました。

乳がんと診断されるまでの経緯は?
しこりを見つけた後、病院に行くのを1週間程ためらいましたが、心を決め、近所の総合病院に行きました。その当時、日本に住んでいたのですが、乳がんの診断が外科だと知らずに、間違って婦人科に行ってしまいました。病院で、マンモグラフィー、超音波検査の後、乳がんの疑いが強いという事で、その後にしこりの部分の針生検を受け、乳がんと診断されました。

乳がんと診断されてから、どうしたのか?
検査を受けた総合病院は、近所の病院だったので、セカンドオピニオンを求めて、別の病院の診察、検査を受けました。その2つ目の病院は大学付属病院で、アイソトープの検査もでき、その検査結果で左鎖骨近くに、まだしこりになっていないがん細胞が発見された為、全摘手術が必要と診断されました。

手術、治療等に関しては?
手術は左胸全摘手術を、セカンドオピニオンをもらった大学付属病院で受けました。術後、放射線治療、抗がん剤治療は受けていません。

ホルモン治療は受けたのか?
退院1週間後の外来診察の際、医師から、手術時に採取した3つのリンパ節からはがん細胞は発見されなかったけれど、私の場合は浸潤がんであると言う事から、ホルモン治療の説明を受けました。その説明では、ホルモン治療を受ける事により5年生存率が3~5%上がるが、その反面、子宮がん等のリスクが増えるといわれました。正直、自分ではどうしたら良いのか判らなかったので、医師に「もし先生でしたらどうなさいますか?」と質問した所、その医師は、はっきり「自分だったら受けません。」とおっしゃったので、ホルモン治療は受けない事を決めました。

乳房再建手術の話は医師からあったのか?
日本の病院だったせいなのか、担当医の方針なのか、全摘手術と決まった時も、医師からは再建手術の話は全く出ませんでした。それに、私自身、その時は「子供達もまだ就学年齢だし、悪い所は早く切り取って欲しい。」とその事ばかりを思っていました。また、私の母が(52歳の時に)乳がんの右胸全摘手術を受けており、それも今から30年以上も前の手術なので、胸筋や脇の下まで「とれるだけ取る」といったものでしたので、そのような母の術後の傷痕を見慣れていたという事もあるかもしれないと思います。

再建手術は考えていないのか?
手術後すぐは、命が有る事がありがたくて、胸を無くしても、それは命との引き換えだからと自分自身納得していたつもりでしたが、だんだん月日が経つにつれ、また、カナダに戻ってから、こちらでは全摘手術と同時に再建手術を受けた場合に保険が利くため、全摘手術を受ける人が多いという事等を聞いているうちに、私もお金は掛かっても再建手術を受けてみようかと思った時期が有りました。どんなに母の傷痕に見慣れていようとも、鏡に映る自分の姿を見れば、そこにあるのは普通ではない姿です。主人や子供達も「受けたかったらやってみたら。」と言ってくれましたが、そこからまた悩み出しました。まだ、結婚前や若い方、またパートナーがどうしても再建手術を受けて欲しいと思っている方は、すぐに決心できるのでしょうが、実際に再建手術を受けた方々から、その大変さ(時間がかかる事や、何度も手術を受ける事等)を見聞きして、果たして自分はそこまでして受けたいのか自分でも判らなかったのです。正直今でも時々考えます。ただ、まだ受けていない理由をしいていうなら、自分の身体に異物を 入れる事に抵抗が有るからだと思います。多分、もうこのまま私は再建手術は受けないだろうと思っています。